マリアナ沖海戦②

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アメリカ側との圧倒的物量差と、日本側航空機搭乗員の練度不足を鑑み、司令長官・小澤治三郎中将が採った戦術が、「アウト・レンジ戦法」でした。

司令長官・小澤治三郎中将は、指揮官を集めて三つの訓示を与えます。
①損害を顧みず。
②大局上必要な場合、一部を犠牲に供す。
③通信連絡が思わしからぬ場合は、指揮官の独断専行を要す。

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日本海軍・「零式艦上戦闘機」は、560浬までの索敵が可能で、

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新鋭艦上爆撃機「彗星」、

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艦上攻撃機「天山」は、
共に300浬先の敵艦攻撃能力があるのに対し、アメリカ側の索敵距離は、350浬が限界、攻撃能力は、200浬以上は無理、とされていました。
『先に敵を発見し、相手の攻撃機が到達出来ない地点から、攻撃を仕掛ける。』のが骨子です。

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「あ」号作戦の主役を演じる、日本海軍・第一機動部隊は、その中の第一航空戦隊に所属する、空母「翔鶴」「瑞鶴」が、2月6日に本土を出撃しました。
本来であれば、沖合で、地上基地から飛び立った飛行機を、順次着艦させて収容するのですが、搭乗員の錬成不足から、新鋭機での空母への着艦訓練が実施出来ておらず、已む無く、港で荷物の如く積み込んだのでした。
3月20日、スマトラ島のリンガ泊地に到着した、空母「翔鶴」「瑞鶴」は、猛訓練を始めますが、艦載機は一旦、空母を発艦してシンガポールの地上基地に着陸し、其処に常駐して主だった訓練を行ったのです。
空母への着艦訓練は、態々リンガ泊地沖合を航行中の空母に対して、初めて実施されるという、体たらくで、着艦失敗や空中接触等、事故は10件以上発生しました。

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スマトラ島のリンガ泊地は、石油の産地・パレンバンに近い為、燃料の心配が無く、水深が浅いので、敵潜水艦に狙われる危険性も無いという、最高の環境の投錨地でした。
但し、航空母艦搭載の艦載機は、発艦・着艦の際には、航空母艦が風上に向かって航行して、風の抵抗を最大にして揚力を得る必要がある為、航空母艦は行動範囲が広くなる傾向がありました。

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3月7日に、呉の海軍工廠で竣工したばかりの新造空母「大鳳」は、艦載機を収容して、3月28日、経由地シンガポールを目指し、山口県平郡島沖から出航ました。

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4月9日にシンガポールからリンガ泊地に到着した空母「大鳳」は、4月15日に第三艦隊旗艦となり、司令長官・小澤治三郎中将座乗の下、5月12日までの一か月間、発着艦訓練を行いましたが、これが事実上、最後の訓練になるとは、誰も想像だに、していませんでした。

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昭和19年5月11日、第一機動部隊は、油の積出港である、バリクパパンやタラカンに近い、タウイタウイ泊地に向かうことになり、5月16日に集結完了しました。

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然しながら、予め機密文書解読で、日本海軍の動向を察していたアメリカ海軍は、クリスチー少将指揮下の南西太平洋潜水艦部隊に所属する、「プファー」「ラッシャー」「ハーダー」の3隻を、タウイタウイ泊地周囲に配置させており、その跳梁跋扈に因り、6月に入ると、潜水艦を掃討する筈の日本海軍・駆逐艦までが、「雷(いかずち)」「水無月(みなづき)」「早波(はやなみ)」「谷風(たにかぜ)」と、相次いで4隻撃沈される事態となり、タウイタウイ泊地の外へ出ての訓練が、6月13日の出港迄、全く出来ず、蟄居(ちっきょ)同然となりました。

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この事は即ち、1ヶ月間、航空母艦への発着艦訓練が出来ず、搭乗員の技量が大きく下がり、戦闘能力が低下したことを意味します。
搭乗員は読書や釣りに興じる等、無聊(ぶりょう)をかこつ以外に、為す術がありませんでした。

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事実、出動訓練と挙艦応急訓練を1回実施したのみの、空母「大鳳」に於いては、タウイタウイ泊地出港直後に対潜哨戒機が着艦に失敗し、甲板上の飛行機5機が炎上・1機が大破・1機が小破・搭乗員1名と整備員7名が死亡する事故が起きています。

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6月14日、最終集結地であるフィリピン中部のギマラス泊地で、夜を徹して、慌ただしく燃料補給が行われました。
6月15日、第一機動部隊は、ギマラス泊地から出撃します。
6月16日、アメリカ軍の搖動作戦に呼応して、西北ニューギニアのビアク島へ派遣していた第一戦隊と合流、夜通しの洋上補給を行いました。逼迫している燃料事情が、垣間見れます。

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アメリカ第58機動部隊指揮官:マーク・ミッチャー中将は、小澤治三郎中将の戦術を、おぼろげながら予測しており、司令長官:レイモンド・スプルーアンス大将に対し、日本艦隊に向かって進撃する事を進言しますが、却下されます。

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司令長官:レイモンド・スプルーアンス大将は、『”サイパン・テニアン・グアム等の、攻略作戦を支援する”という主任務を、優先するべきで、サイパン・テニアン・グアム近海から離れるべきではない。』との見解でした。

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司令長官:レイモンド・スプルーアンス大将の見解には、3つの根拠がありました。
①150浬前方を探知出来る、レーダーが完備されている。

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②目標物の近くに行けば、自動的に爆発する、「VT近接感応信管」を持った砲弾を装備している。

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③「日本海軍・零式艦上戦闘機」の性能を上回る、「グラマンF6F・ヘルキャット戦闘機」の、配備・練成が進んでいる。

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ミッドウエイ海戦時とは異なり、日本側が先に敵を発見し、先制攻撃を仕掛けますが、ミッドウエイ海戦時と比して、彼我の物量差が圧倒的で、搭乗員の練度差も大きく、加えて、《レーダー・VT信管・ヘルキャット》という、完璧な防御システムを構築していたアメリカ側に、挑もうとしていたのです。
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tag : マリアナ沖海戦 小澤治三郎 大鳳 マーク・ミッチャー レイモンド・スプルーアンス

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Author:ecocitro
妻・娘・息子との四人暮らしです。
【シトロエン】
《1975 GS1220 club》
亡父が1975年に新車で購入し、ブログ著者に名義変更して現有。
《1973 DS23IE pallas》
1992~2016 24年間所有。
《1972 SM2.7》
2002~2007 5年間所有。
【楽器演奏活動】
《集団演奏》
JAZZ PIANOの集団演奏活動を、目論んでいます。
《鍵盤/打楽器》
幼少時にクラシック・ピアノを習得。
学生時代の4年間は、ジャズ・ドラムの個人レッスンを受講。
社会人になってから、ジャズ・ピアノ教室で、3人の講師に師事。
【作詞/作曲/編曲】
自作曲をCuebaseで完成させる傍ら、それをネットで公開して、評価を仰ぐ事に注力します。
【ミニカー蒐集】
シトロエンGS/AとシトロエンSMモデル以外を、2017年1月に売却。
【運動】
サッカー・水泳・野球等、色々経験した結果、最も肌に合って楽しいスポーツは、バスケットボールでした。
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